PrEP薬としてのDescovyとジェネリック医薬品について

TwitterFacebookではすでにお知らせしましたが、20019年10月3日(現地時間)、FDA(アメリカ食品医薬品局)は、Descovy(日本製品名:デシコビ)をPrEP薬として承認しました。MSM(男性とセックスをする男性)とトランス女性(男性とセックスをする)に対してのみの適応で、シスジェンダー女性とトランス男性は、今回の適用対象者に含まれていません。また現時点での服用方法として、デイリーPrEPのみが推奨されています。詳しくは、米ギリアド・サイエンシズ社のプレスリリースをご参照ください。

U.S. Food and Drug Administration Approves Descovy® for HIV Pre-Exposure Prophylaxis (PrEP)

現在、日本国内ですでにPrEPを開始している人たちは、進行中の治験に参加していて、正規品のTruvada(日本製品名:ツルバダ)を服用しているか、海外からジェネリック医薬品を個人輸入して服用しているかと思います。

今回、PrEP薬として新たに承認されたDescovy(日本製品名:デシコビ)にも、ジェネリック医薬品がすでに存在していますので、紹介いたします。どちらも大手の製薬会社によって製造されています。

      • Taficita (Mylan)
      • Tafero EM (Hetero)

Taficita

TaferoEM

 

 

 

 

 

 

 

Green Cross Pharmacy など、上記のジェネリック医薬品を取り扱っているショップで価格帯を調べてみましたが、Truvada(日本製品名:ツルバダ)のジェネリック医薬品と大きな差額はありませんでした。

Truvada(日本製品名:ツルバダ)を服用していて、腎機能や骨密度についてセクシュアルヘルスの専門医から指摘を受けている方は、Descovy(日本製品名:デシコビ)への切り替えを検討してもいいかもしれません。定期検査の際に、セクシュアルヘルスの専門医に相談してみましょう。

ゲイ・バイセクシュアル男性向けPrEPについての学習会2019

ゲイ・バイセクシュアル男性を対象にしたPrEPについてのワークショップを12月7日(土)に開催します。ぜひご参加ください。

PrEP学習会2019 for ゲイ・バイセクシュアル男性
Tokyo AIDS weeks 2019

【日時】
2019年12月7日(土曜日)19時~21時(開場18時30分)
【会場】
なかのZERO 学習室2 (〒164-0001 中野区中野2丁目9番7号)
【講師】
上村悠(国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター Sexual Health外来)
【資料代】
300円
【参加対象者】
ゲイ・バイセクシュアル男性
【申込フォーム】
https://forms.gle/9h2Xqfita4K4gD9J6
*要事前申込(定員30名程度)
*手話通訳あり
*申し込み受付完了のメールは、11月16日(土)以降にお送ります
*お申し込み後、キャンセルされる場合は、lgbtcolourfulheart@gmail.com までご連絡をお願いします

workshop_for_gay_and_bisexual_men

2019年現在、すでに多くの国で無料あるいは安価に提供されているHIV予防「PrEP」。日本国内の医療機関でPrEPを行う場合は自由診療に限られ、非常に高額です。安価な方法としてジェネリックの個人輸入がありますが、これまでどのウェブサイトから購入すれば安全な薬が手に入るのか、PrEPは実際にどう行えば効果があるのか、どのような検査を受ければ良いのかといった情報はごく限られていました。

私たちカラフル@はーとは、2019年8月にPrEPの詳細な情報を日本語で入手できるウェブサイトPrEP@TOKYOをオープンし、多くの方にご利用いただいています。サイトでは、PrEPのやり方、副作用、検査といった基本的な知識が得られるだけでなく、品質の保証された(偽物でない)ジェネリック医薬品が購入できるウェブサイトの紹介まで行っています。

本イベントでは、HIVの治療・予防・研究活動の第一人者である上村先生をお招きし、性感染症とPrEPについて解説していただく予定です。また、簡単なグループワークや質疑応答でPrEPの知識を深めたいと考えています。カラフル@はーとが開設したPrEP@TOKYOについても情報提供を行います。

PrEPのことを知りたい方や開始を検討している方はぜひこの機会にご参加ください。

プログラム
前半
上村悠先生による、PrEPの解説
カラフル@はーとによるPrEP@TOKYOの情報提供

後半
グラウンドルールの読み合わせ
参加者同士でのグループワーク
Q&A

【主催】
カラフル@はーと
【ホームページ】
https://hiv-prep.tokyo
【問い合わせ】
lgbtcolourfulheart@gmail.com

トランス/NB向け セクシュアルヘルスに関するワークショップ

トランスジェンダー/Xジェンダー/ノンバイナリーの人たちを対象にしたセクシュアルヘルスについてのワークショップを11月30日(土)に開催します。PrEPについてのレクチャーを含む学習会です。ぜひご参加ください。

「専門家や当事者同士で話そう!トランスとXジェンダーのセクシュアルヘルス」

ミニ上映会 「Trans People Taking PrEP」 Tokyo AIDS Weeks 2019

【日時】
2019年11月30日土曜日 開場:18時30分 開始:19時 終了:21時
【場所】
なかのZERO 学習室2 (〒164-0001 中野区中野2丁目9番7号)
【講師】
吉野一枝先生(よしの女性診療所)
宮田りりぃ氏(公益財団法人エイズ予防財団/関西大学人権問題研究室)
山口正純先生(武南病院)
【資料代】
300円
【参加対象者】
トランスジェンダー / Xジェンダー / ノンバイナリー
【申込フォーム】
https://forms.gle/SYD5jgpyK2Sr3bAP7

要事前申込(定員30名程度)
*申し込み受付完了のメールは、11月16日(土)以降にお送ります
*お申し込み後、キャンセルされる場合は、lgbtcolourfulheart@gmail.com までご連絡をお願いします

Workshop_for_Trans_and_NB

トランスジェンダー、Xジェンダーなどの当事者が集まり自身のセクシュアルヘルスについて話す場はあまりなく、健康問題等に不安を抱えるけれど、なかなか相談場所や情報リソースもないのが現状です。今回のイベントでは、性感染症の予防・検査・治療や健康問題など日ごろ感じていることや不安に思っていることを登壇者とともにお話できればと思います。

プログラム
前半
・吉野一枝先生 講演「性感染症の予防、検査・治療、健康問題、当クリニック受診時の配慮をした対応策等」
・宮田りりぃ氏 講演「日本のトランスジェンダーのセクシュアルヘルスの現状」
・山口正純先生 PrEPに関するレクチャー
・ショートドキュメンタリー上映「Trans People Taking PrEP」
後半
・グラウンドルールの読み合わせ
・参加者同士でのグループワーク
・Q&A

主催:カラフル@はーと

PrEP@TOKYO https://hiv-prep.tokyo
お問い合わせ lgbtcolourfulheart@gmail.com

PrEP 啓発用カードを送付します

このたび、PrEP の啓発用カード1万枚作りました。ゲイバー、クラブ、ハッテンバなどのゲイ向け施設や、LGBT向けのコミュニティスペース、保健所、医療機関等にカードを設置していただける方の依頼を以下のフォームから受け付けます。

PrEP啓発用カード送付先連絡用フォーム

※個人宛ての送付は受け付けておりませんが、もし希望される場合はこちらからご相談ください⇒ https://hiv-prep.tokyo/contact

postcard_size_message_cards

カードは全4種類(名刺サイズ2種類、ポストカードサイズ2種類)です。必要数をフォームに入力して下さい。送料は無料です。私たちの団体スタッフが手作業で発送を行います。9月末頃の発送を予定していますので、お申し込み後はしばらくお待ちください。
*なお、差出人名は「カラフル@はーと」となります。

small_message_cards

PrEPに関する英国の最新調査結果(2019年)

2019年8月14日、イングランド公衆衛生サービス(Public Health England)が、PrEPsteriwantPrEPnowと共同で行ったPrEPに関する調査結果を公表しました。調査結果からいくつか興味深い部分をピックアップして紹介します。

Online_Survey_in_England_2019

今回の調査は、2019年5月17日から7月1日の間に実施され、2389人が回答。ゲイ向けのデート用アプリGrindrなどで調査協力を呼びかけ、PrEPsterとiwantPrEPnowのメーリングリストやSNSでも回答者を募った。1/4以上の回答者がGrindrを通じて、調査ページにアクセスした。

回答者は自身を以下のように定義している

      • ゲイ男性:92%
      • バイセクシュアル男性:6%
      • トランスもしくはノンバイナリー:2%
      • ヘテロセクシュアル:0.5%
      • 白人:86%
      • その他の民族集団:14%

PrEPの入手先として挙げられたのは以下の通り

      • the English IMPACT trial(現在英国で実施中のPrEPの治験):54%
      • 各地の健康保険サービス(スコットランド、ウェールズ、北アイルランド):5%
      • オンラインショップ、プライベートクリニック、友人から入手:37%

コンドームの併用と性的パートナーの人数

      • 96%の回答者が、コンドームを使用しない性交渉を少なくとも1回、過去半年間に行った
      • 1/3の回答者が10人以上のパートナーと性交渉を行った
      • PrEPとコンドームを常に併用しているユーザーは、かなり少数:4%以下

PrEPの入手について

      • 回答者のうち、22%が過去1年間にPrEPを入手しようとして、入手できなかったと申告
      • 上記回答者のうち3/4が、the English IMPACT trialに登録できなかったと回答
      • ロンドン市以外に居住している人は、ロンドン市民よりもPrEPの入手が困難であった
      • 過去1年間にPrEPを入手しようとして、入手できなかったと申告した回答者のうち82%(全回答者の約20%)が、過去6か月間にコンドームを使用しない性交渉を行ったと回答

PrEPを服用中の人たちからの回答

      • コンドームを使用しない性交渉を行っているPrEP服用中の人たちの約半数近くが、性交渉の相手がPrEPを服用中か、HIVの治療薬を服用中か、わからない、もしくは確信がないと回答
      • PrEPを服用中と回答したうちの、86%が過去3か月以内にHIV検査を受検したと申告し、79%が前年に3回以上HIV検査を受検したと回答
      • PrEPを個人輸入などの方法で入手して服用している人の回答に絞ると、71%が過去3か月以内にHIV検査を受検したと申告し、58%が前年に3回以上HIV検査を受検したと回答
      • PrEPを服用中と回答したうちの、2/3が前年3回以上STI(性感染症)検査を受検したと申告
      • PrEPを個人輸入などの方法で入手して服用している人の回答に絞ると、半数以下が前年3回以上STI(性感染症)検査を受検したと申告

STI(性感染症)について

      • PrEPを服用している人たちの約半数(51%)が、前年、何らかの性感染症と診断されたと申告(以下内訳)
          • 淋病:65%
          • クラミジア:61%
          • 梅毒:16%
      • PrEPを個人輸入などの方法で入手して服用している人の回答に絞ると、前年、41%が何らかの性感染症と診断されたと申告
      • PrEPを服用していると申告したうちの13%(PrEPを個人輸入などの手段で入手している36%中37%)が、定期的にクリニックへ通院せずPrEPを服用している(その回答者たちは、前年に1回もしくは0回のみHIV検査を受検したと申告)
      • PrEPを個人輸入などの手段で入手して服用中の人たちの約半数が、服用開始前・服用中の腎機能検査を未受検と申告

PrEPの服用を止めた理由

PrEPの服用経験のある人のうち、18%が服用を止めたと回答。服用を止めた理由は以下(複数回答可)

      • 性交渉をしなくなった:36%
      • 一対一の閉じた関係になった:23%
      • PrEPを購入する金銭的な余裕がなくなった:24%
      • PrEP自体の入手が困難であった:22%

PrEPを服用中のユーザーからのPrEPに対する印象

      • ほとんどのPrEP服用者は、PrEPに対して肯定的な見方をしており、3/4が完全にプラスの効果があり、マイナス面はないと申告
      • 12%の服用者が、プラス面とマイナス面の両方を申告
        「性交渉の際に感じていた不安を軽減できた」
        「性的なパートナーとの親密感が増した」
        「性感染症の定期検査に行く際の不安を軽減できた。以前は、安全な背性交渉をしていたのにも関わらず、不安に感じて、検査に行くのを先延ばしにしていた」

今回の調査に協力したグループの代表者からは以下のコメントがよせられました。

Greg Owen (iwantPrEPnow 共同創設者)
「英国でPrEPを服用している人たちの1/3は、オンラインショップからPrEPを入手しています。PrEPを服用したいと考えている人が、入手できていること自体は喜ばしいのですが、その人たちが望むサポートや(定期検査などの)見守りを提供する責任が、私たちにはあります。」

Will Nutland (PrEPster 共同創設者)
「この調査結果のデータは、イギリスでPrEPの提供を完全に公認し、オープンアクセスにする必要性をより強固にしています。
PrEPの入手を望んでいた回答者の5人のうち1人は入手できず、PrEPの使用を止めた人たちの1/5は、アクセスの問題でPrEPを中断していました。」

この記事は、以下の2つの記事を参考に書きました。

People getting PrEP at their clinic have more STI and HIV tests than people who buy it online

‘Scandal’ as English gay men at risk without access to HIV prevention pill

WHO(世界保健機構)オンデマンドPrEPを承認

WHO(世界保健機構)は7月下旬にメキシコシティで開催された第10回国際エイズ学会 IAS 2019 で、オンデマンドPrEP(別名:EBDまたは2-1-1)をMSM向け服用方法の選択肢のひとつとして、承認しました。

TECHNICAL BRIEF WHAT’S THE 2+1+1? JULY 2019

WHO_PrEP_211

これまでWHOはデイリーPrEPを唯一の服用方法と推奨してきましたが、これによりオンデマンドPrEP(別名:EBDまたは2-1-1)を検討する人たちが増えると考えられます。

最初に述べましたが、この方法はMSM(男性とセックスをする男性)だけに推奨されており、女性(シスジェンダー・トランスジェンダー)とトランス男性には適していません。この服用方法は、性交渉の頻度が低く、前もって性交渉が行われることを少なくとも2時間までに予測できる人に適しています。性交渉の頻度が高い人は、デイリーPrEPを服用方法として選択するのが望ましいでしょう。

PrEPに関する新しい情報ページをCDCが公開

CDC(アメリカ疾病管理予防センター)が「HIV感染のリスクを減らすための予防方策の有効性」と題したページを7月20日(現地時間7月19日)に公開しました。これまで言及していなかったいくつかの点について、さまざまな研究結果(科学的エビデンス)や報告を引用して説明しています。

Effectiveness of Prevention Strategies to Reduce the Risk of Acquiring or Transmitting HIV

以下、簡単に要約します。

      • PrEPの有効性が99パーセントと明言(MSMとシスジェンダーの異性愛者ー男女間)
      • MSMにおいて、PrEPを毎日、もしくは少なくとも週に4回服用することは、~99パーセント有効性があると認める
      • オンデマンドPrEPが科学的に有効で予防効果があると認める
      • コンドームの有効性(HIVの予防効果について)→アナルセックスのウケ側の場合、72パーセントから91パーセント
      • HIV陰性で服薬遵守していたPrEPのユーザーで、のちに陽性になったケースが、世界で3ケースと認める
      • TasP (or U=U)の有効性が100パーセントと明言