30. 肛門性交が感染リスクの場合、オンデマンドPrEPはデイリーPrEPと同じくらい有効なの?

オンデマンドPrEPを調査したフランスのIPERGAY研究の有効性の結果は、デイリーPrEPを調査したイギリスのPROUD研究とほぼ同じでした。どちらの研究でも、PrEPの服用方法を遵守していた人は誰もHIVに感染していませんでした。それ以来、オンデマンドPrEPはフランスで展開されており、ほかのヨーロッパ諸国でも実施研究を通じて提供されています。また、シスジェンダーのMSMでオンデマンドPrEPを遵守したHIV感染の報告はありません。IPERGAY研究の結果を解釈するにあたっては1つ問題があり、多くの治験参加者がかなり頻繁に性交渉を行なっており、高い頻度でPrEPを服用していました。平均して、参加者は毎月15錠を服用し、5人に1人の参加者は毎月25錠以上服用しました。つまり、ほぼ毎日の服用に相当します。これは、次の服用までの間に薬物レベルが著しく低下する時間がないことを意味するでしょう。とはいえ、コンドームなしの性交渉を行う頻度が低い(平均で週1回)が、オンデマンドPrEPを推奨される方法で服用したIPERGAY参加者の分析は、PrEPが変わらず有効であったことを示しています。PrEPを服用しているグループではHIVの感染はありませんでしたが、プラセボ(偽薬)を服用しているグループでは感染が発生しました。オンデマンドPrEPは一般的にデイリーPrEPより少ない服用量なので、服薬方法を遵守しなかったり、薬を飲み忘れることは有効性に大きな違いをもたらすでしょう。デイリーPrEPを服用中で、とりわけ感染リスクが肛門性交の人は、もしときたま、服用を忘れたとしても、予防効果が保たれているでしょう。オンデマンドPrEPではこの限りではありません。いくつかの国際的なガイドラインは、オンデマンドPrEPについて慎重な態度を示しています。この理由の一つは、これまで有効性を示した研究がIPERGAY研究しかないからです。通常、複数の研究で一貫した結果を得られることが望ましいとされています。IPERGAY研究の結果は非常にすばらしいですが、研究としては比較的小規模でフォローアップ期間も短いものでした。