13. 陰性の結果を受け取ったあと、すぐにPrEPをはじめていいの?

第4世代のHIV検査が陰性だった場合は、すぐにPrEPを開始できます。検査前の4週間にHIVの感染リスクがあった場合、最近のHIV感染が検出されないことがあるため、4週間後に再検査することをおすすめします。再検査でHIV陽性だった場合は、PrEPの服用を中止し、ただちにHIVの専門医療機関からのアドバイスとサポートを受けてください。

12. PrEPを開始する前に、HIV検査をすべき?

PrEPを開始する前に、確実にHIVに感染していないことを確認することが重要です。必ず「第4世代抗原・抗体検査」を受けてください。この検査は、古い世代の検査よりも早い段階(暴露後3~4週間)でHIVの感染を検出できます。 「第4世代」のHIV検査は、通常、セクシュアルヘルスクリニックでしか利用できません。自己検査キットなどの指から採血するタイプの検査方法は、直近のHIV感染検出において第4世代ほど優れていません。

11. PrEPについて医師と相談すべき?

PrEPの服用を検討している場合、セクシュアルヘルスクリニックの医師と相談することを強くおすすめします。医療スタッフはあなたがPrEPを行うのが適切かどうか判断するのを手助けしてくれるでしょう。そしてPrEPを開始する前に、腎機能検査など重要な検査を提供してくれるでしょう。そしてこれはとても重要なことですが、適切な方法を用いたHIV検査を行ってくれるでしょう。PrEPを開始するときには、HIVが確実に陰性であることが適切な検査で確かめられなくてはならないのです。

10. PrEPはPEPと違うの?

PrEPはPEPと異なります。PEPは、HIVに暴露したと思う人が、性交渉後に28日間服用するものです。PEP( Post– Exposure Prophylaxis「暴露後予防内服」)とPrEP(Pre-Exposure Prophylaxis「暴露前予防内服」)の主な違いは、PEPはHIVに暴露したと考えられる性交渉「」に服用され、PrEPは性交渉「」に毎日継続して服用される点です。

9. 副作用はあるの?

PrEPを服用する人のほとんどは副作用を経験しません。副作用がでた場合も、たいていの場合は数週間以内に自然になくなる傾向にあります。副作用には、腹痛、下痢、頭痛、または倦怠感が含まれます。PROUD study(イギリスで実施されたPrEPの効果を調べる大規模調査)の参加者によって報告された副作用はわずかでした。また、副作用を理由にPrEPを中断したほとんどの人が、服用を再開することができました。

8. PrEPの服用を忘れた場合、どうすればいいの?

PrEPの服用をときたま忘れてしまっても、(それまできちんと服用できていれば)体内では高い予防効果が保たれています。飲み忘れに気づいたときに1錠服用し、決められた服用方法を続ければOKです。時々であれば2錠を1日で服用してしまっても安全性に問題はありません。

7. PrEPは一生服用しなければいけないの?

人のHIV感染リスクは一定ではありません。生活環境の変化や時間の経過とともに変わりがちです。たとえば、新しい都市に移ったり、安定していた相手との関係を解消したりすると、感染リスクが高くなる時期がはじまるかもしれません。これらは時に「リスクの時期(seasons of risk)」とも呼ばれます。人はさまざまな理由でPrEPの使用をやめるかもしれません。たとえば、性行動を変えたり、HIV陽性のパートナーのウイルス量が検出限界以下に達したり、あるいは関係が安定してほかと性交渉をしない1対1の関係になったりするかもしれません。PrEPの服用者に対するサポートには、HIVの暴露リスク、PrEPを安全にやめたり再開する方法の啓発といった、PrEPを取り巻く状況の認識を含める必要があるでしょう。 PrEPをやめる場合でも、最後のHIVの感染リスクがあったあとの数日間は、服用を続ける必要があります。

6. PrEPの効果がではじめるまでに、どれくらいの日数、薬を服用する必要があるの?

この問いの回答はいくつかの基礎研究から導き出されます。これらの研究では、血液、膣組織、直腸組織において、薬物濃度が最大になるまで、もしくは「定常状態」になるまでどれくらいの時間を要するかが示されています。薬の種類によって、体の各部位における有効濃度に達する時間が異なります。たとえば、PrEPに含まれる2つの薬、テノホビルとエムトリシタビンの間には有効な血中濃度に達するまでの時間に違いがありますが、PrEPが有効となるためにはどちらの薬もおそらく必要です。研究は複雑かつ不完全です。英国HIV協会(BHIVA)のガイドラインの執筆者は、研究について再検討した上で、PrEPの服用者のための実用的なアドバイスとして、以下の推奨をしています。HIVの感染リスクが肛門性交の場合か膣性交の場合かで、推奨内容は異なります。

HIVの感染リスクが肛門性交の場合、服用スケジュールの種類に関わらず:
・開始するとき:PrEPは、性交渉の2~24時間前に2錠服用することで開始できます。
・止めるとき(中断するとき):PrEPは、最後の性交渉の48時間後まで毎日続けられなくてはいけません(PrEPをやめる場合でも、最後の性交渉後、24時間後に1錠、48時間後に1錠服用することは必須です)。
・再開するとき:PrEPの服用中断後、7日以内に再開したい場合、1錠の服用で再開可能です。もし 7日以上経過している場合は、2錠服用して下さい。

HIVの感染リスクが膣性交または「前方」の性器による人の場合:
・開始するとき:PrEPは、性交渉をする7日前までに、1日1錠を服用する方法で開始されるべきです。もし性交渉までに、完全に7日間PrEPを服用できない場合、性交渉直前の服用を2錠にすることがさらなる予防になるかもしれませんが、この方法は証明されていません。コンドームやほかの予防方法を、PrEPの服用の最初の数日は併用してもいいでしょう。
・止めるとき(中断するとき):最後の性交渉の7日後まで毎日PrEPを服用するべきです。
・再開するとき:開始するときと同じ方法で行います。

薬物注射による感染リスクの場合
性交渉による感染リスクと同様に、組織よりも血液の方が、PrEPの濃度が保護レベルに達するまでにより時間がかかるということを認識する必要があります。薬物注射をする7日前から7日後までの間、PrEPを服用することが推奨されます。

5. PrEPの服用方法の違いは何ですか?

HIVの感染リスクが膣性交または薬物注射の場合は、PrEPは毎日服用する必要があります。感染リスクが肛門性交ならば、さらに2つの選択肢があります。それは、週4日の服用(別名:Ts and Ss)とオンデマンドPrEPです。

デイリーPrEP
PrEPを1日1回、毎日、継続的に服用する方法です。ほとんどのPrEPの研究はデイリーPrEPに基づいて行われており、ほかの服用方法よりもデイリーPrEPの方がより科学的なエビデンスがあります。デイリーPrEPは、肛門性交、シスジェンダーの異性愛者(男女)の膣性交および薬物注射に関して研究が行われてきました。多くの国際的なガイドラインが、PrEPを服用する唯一の方法としてデイリーPrEPを推奨しています。

週4日の服用(別名:Ts and Ss)
HIVの感染リスクが肛門性交の場合、PrEPの服用が週に4日でも充分効果があると研究により示されています。これは最も厳格な研究であるランダム化比較試験では調査されていませんが、この方法が効果的であることが経験的に示されています。コストや副作用の懸念から、週に4日だけ服用すると決める人もいます。この服用方法では、たとえば火曜日、木曜日、土曜日、日曜日と、PrEPを一日置きに服用するのが最適です。体の部位によって薬物吸収が異なるため、HIVの感染リスクが膣性交や薬物注射の場合は、この方法では効果は期待できません。

オンデマンドPrEP(別名:EBDまたは2-1-1)
「event-driven」または「event based」投与とも呼ばれるこの服用方法は、性交渉の直前そして直後にPrEPを服用するものです。フランスのIPERGAY研究では、肛門性交によるHIV感染の予防の場合にはオンデマンドPrEPが有効であることが示されています。IPERGAY研究でのオンデマンドPrEPの服用方法は、予想される性交渉の2~24時間前にPrEPを2錠服用します。そして性交渉後、最初に2錠を服用した24時間後と48時間後に1錠ずつ服用します。数日連続で性交渉を行う場合は、最後の性交渉の48時間後まで毎日1錠の服用を継続してください。ほとんどのヨーロッパのガイドラインは、HIVの感染リスクが肛門性交の場合、オンデマンドPrEPを支持しています。 HIV i-Baseによって公表された「英国でのPrEPガイドライン」では、この服用方法の実例を図表で示しています。体の部位によって薬物吸収が異なるため、オンデマンドPrEPは、HIVの感染リスクが膣性交や薬物注射による人には推奨されません。

4. PrEPはどのように効くの?

もしPrEPを服用している人がHIVに感染するリスクにさらされた場合、服用したPrEPの薬が、HIVの細胞への侵入や複製を阻害します。この作用がHIV罹患を防ぎ、PrEPの服用者をHIVの感染から守ります。