イギリス国内と国際的なガイドラインは、この点に関して一貫した推奨を出しています。 HIVの感染リスクが膣性交による人へのオンデマンドPrEPは推奨されていません。膣性交の場合、デイリーPrEPが推奨される唯一の方法です。
第一の理由は、オンデマンドPrEPが男性と性交渉を行うシスジェンダー男性に対してのみ調査されており、その主なHIVの感染リスクは肛門性交によるものだということです。
第二の理由は、テノホビル(PrEPに含まれる2種類の薬物成分の1つ)が組織内で十分な濃度に達する時間に差があり、直腸に比べ膣でははるかに長い時間を要するためです。つまり、膣性交の場合、オンデマンドPrEPでは充分な効果が期待できないということです。
22. PrEPは女性にも効く?
PrEPが女性にも有効であることには明らかなエビデンスがあります。ウガンダとケニアでシスジェンダーの異性愛者(男女)を対象にした大規模調査で信頼性の高いエビデンスが示されており、ボツワナで行われた同様の調査でもその有効性が示されています。これらの研究において、ほとんどの人にとって主なHIVの感染リスクは膣性交でしたが、一部の人々においては肛門性交も感染リスクのひとつであったと考えられています。このエビデンスをもとに、イギリス国内および国際的なガイドラインでは、感染経路が膣か肛門かを問わず、性交渉を通したHIVの感染リスクのあるすべての人々にPrEPを推奨しています。
21. PrEPはホルモン剤と相互作用がありますか?
いくつかの国際研究において、トランスの参加者のPrEPのアドヒアランス(服薬順守)の低下をもたらした要因は、PrEPと性別適合のためのホルモン療法に用いられる薬の薬剤相互作用に対する怖れ、あるいはそれに関する情報の欠如があったと思われます。多くのトランスの人々は、HIVを含むほかの健康上の問題よりもホルモン剤の服用を優先します。
英国HIV協会(BHIVA)のガイドラインは、エチニルエストラジオール(すでに性別適合のためのホルモン療法の一部として推奨されなくなったホルモン剤)を除き、PrEPと女性ホルモン剤または男性ホルモン剤との間に明かな相互作用はないと述べています。
20. PrEPはトランス女性にも効くの?
iPrEx研究のオープン化継続延長試験のデータは、トランス女性がPrEPを処方通りに服用した場合、非常に有効であることを示しています。男性と性交渉を行う151人のトランス女性のうち、週に2~3錠以上の服用ができていた人は誰もHIVに感染しませんでした。一方、週に2錠以下しか服用できていなかったトランス女性3人がHIVに感染しました。一部のトランスの人々がPrEPの服用に懸念を持つことには理由(21番参照)があるようです。
19. PrEPは誰に推奨されていますか?
国際的なガイドラインでは、HIV感染のリスクがある程度高い人々にPrEPを推奨しています。西ヨーロッパでは、PrEPは男性と性交渉を行う男性、および男性と性交渉を行うトランス女性に推奨されています。これらのコミュニティでHIVの罹患率が非常に高いためです。シスジェンダーの異性愛者(男女)間での性交渉に関しては、それほど強い勧告は出されていません。ヨーロッパのほとんどの国では、HIVの罹患率は、シスジェンダーの異性愛者(男女)間では低くなっています。したがって、カジュアルなパートナーとコンドームなしの性交渉をしたとしても、そのパートナーがHIV陽性者である可能性は比較的低いでしょう。
18. PrEPを服用していてもコンドームは必要?
PrEPを服用中の人は、通常コンドームを併用するようすすめられますが、実際には多くの人がコンドームを使用せずにPrEPを服用しています。特にコンドームが好きではない人や使うのが難しいと感じる人にとっては、PrEPはHIVの感染予防に非常に効果的な方法です。さらに予防したい場合は、コンドームとPrEPを併用することがより安全性を高めます。コンドームはほかの性感染症も予防しますが、PrEPの場合は不可能、ということは非常に重要であると思われます。
17. PrEPはHIV以外にも何か予防できるの?
PrEPはHIVの感染予防にのみ効果的であることが証明されています。PrEPが単純ヘルペスウイルス2型およびB型肝炎の感染予防に何らかの影響を与える可能性を示唆する研究もありますが、はっきりしたことはわかっていません。
それとは対照的に、コンドームの場合、毎回正しく使用すれば、HIV、淋病、クラミジア、梅毒、C型肝炎、およびそのほか多数の感染症の防御になります。
また、PrEPに避妊効果はありません。PrEPを服用中の人には、PrEPがほかの避妊方法には影響を与えないという確認も含めて、避妊に関するアドバイスが必要な人もいるでしょう。
16. 腎機能検査とは?
ごくまれですが、PrEP服用中に腎臓に問題が生じる場合があります。腎機能検査をすることにより、医療者がPrEPを中断すべきか、あるいは中止すべきかといった判断のアドバイスをしてくれるでしょう。PrEPの開始前または開始後ただちに、血液検査(血液中のクレアチニンおよびeGFR)と尿検査(尿中のタンパク質)の両方を受けることをおすすめします。
15. PrEPをはじめてからは、ほかにどんな検査を受ける必要があるの?
性的にアクティブな方の場合、PrEPを使うかどうかにかかわらず、HIVとほかの性感染症のスクリーニングに関する同じガイドラインが適用されます。HIVと全ての性感染症のスクリーニング検査は、アクティブなセックスライフを送る人にとってすばらしいアイデアです!さらに、腎機能をチェックするために、受診時の尿検査および年に一回の血液検査が推奨されます(16番参照)。また受診時には、B型肝炎の予防接種状況を確認したり、HPV(ヒト・パピローマウイルス)予防接種についてたずねることもお勧めです。
14. インフルエンザのような症状があったけれど、PrEPをはじめていいの?
HIVの感染リスクがあった後にインフルエンザのような症状があった場合は、PrEPを開始しないことが重要です。インフルエンザのような症状は急性HIV感染による症状の可能性があるので、セクシュアルヘルスクリニックからのサポートとアドバイスを受けてください。